34平岡町探訪:土山大洪水(1)

戦争がおわり、夫のもとに急ぐ宮本百合子(小説では、ひろ子)は体験にもとずいた小説『播州平野』を書いた。その一節に土山(平岡町)が登場する。6月6日のブログ「宮本百合子 in 加古川市」でも紹介しているので、ご覧いただきたい。土山は、印南野台地上にあり、かつて旱魃は幾度も経験するが、洪水とはおよそ無縁の土地であった。

それが昭和20年10月、台風が襲い、池の堤防が崩れ、水が一挙に喜瀬川沿いの民家を直撃したのである。死者26名を出す、未曾有の大洪水になった。

当時の神戸新聞(12日付)は「・・・国道も土山、大久保付近二カ所で橋梁が流されて、僅かに仮橋で交通を保っているに過ぎない」と、簡単に報じている。

この時、喜瀬川は、流れを一部変えた。図の土山の小字(土山の字限図より作製)を見て欲しい。字、「ドウジ山」と「中曽根」の間にくびれたカ所があるが、そのあたりの被害が特に大きかった。

宮本百合子は、昭和20年10月9日やっとの思いで、姫路についた。その日、この地方を台風が襲った。

百合子が土山の被害に遭遇するのは10月11日のことである。『播州平野』をお読みいただきたい。

*なお、この土山大洪水については、3回のシリーズで取り上げます。

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