私たちの生活の舞台である印南野(いなみの)はしばしば文学にも登場している。
清少納言は『枕草子』で、印南野を嵯峨野についで二番目にあげている。
野は、嵯峨野さらなり。印南野。交野(かたの)。飛火野(とぶひの)。しめ野。春日野。そうけ野こそ、すずろにおかしけれ・・・・
*すずろにおかしけれ・・・・・心ひかれて、趣がある
清少納言が、野について述べているところで、印南野を二番目に取り上げた理由は分からない。特別な個人的なつながりや思い出があったとも考えられない。とすれば、印南は中央(京都)でも広く知られていた地名であったようだ。印南野がもっとも多く登場するのは、なんと言っても『万葉集』である。
(山部赤人)
印南野の 浅茅押しなべ さねる夜の けながくしあれば 家し偲はゆ (巻六ー九四○)
《いなみ野の短い茅(ちがや)を押しなびかせて寝る夜の日数がつもったので、家が恋しくなった》
明日のブルグでは続きを紹介したい。

