
「懐かしい風景:大野村(ブログ・18)」と内容が重なるが、今福村の風景を書いておきたい。ここに、見事に人生を終えた一人の俳人がおられる。彼は、永田耕衣(ながたこうい)で、明治33年2月21日、現在の尾上町今福で生まれた。
耕衣は、俳句の世界ですばらしい業績を残しているが、その生き方がユニークで、現代の高齢化社会に「老後をいかに生きるか」というテーマを提起している。耕衣の業績と生き様に感動した城山三郎は、小説『部長の大晩年』(朝日新聞社)で彼を紹介した。
内容は、小説をお読みいただきたい。小説で城山氏は、耕衣の小学生(明治時代の終わり)の頃の今福村を、次のように紹介している。今福村を流れる五ヶ井用水辺りの風景である。
・・・・(今福村は)加古川の豊かな水を引きこんだ水路には、フナ・ドジョウ・ナマズなどが多く、林蔵(耕衣の父)がナマズを好むので、耕衣は特にナマズを狙った。岸辺の水草や藻を突いて追いかけたのを、タモですくったり、小さな蛙をしばりつけて、針金で釣りあげたり、・・・初夏にはホタルが特に多いところで、無数に群れて、いくつもの光の玉、光の雲のようになり、輪を描きながら夏空を低く舞う・・・(『部長の大晩年』・第二章:「ホタルの里」より)
私も、Sさん(故人)から戦前の今福の風景を取材したことがある。城山氏の小説の記述のとうりであった。今福を流がれる五ヶ井用水(写真)は「フケの川」とよばれ、夏には水遊びの子どもの歓声があった。
